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ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア [DVD] ドイツのトーマス・ヤーン監督の傑作ロードムービー。

あと何日生きられるか分からない二人の男が、天国で流行っているという「海」の話に加わることができるように、本物の海を見に行くという物語。
病院に停まっている車を盗み、店や銀行からは大金を奪う。警察やワケありな車の持ち主には追いかけられる。日を追うごとに悪事はエスカレートしていく。そんな逃亡劇がテンポよく描かれている。
「もうすぐ死ぬんだから、怖いものはない」という荒くれ方も、潔く痛快。しかし、そんな悪事を賞賛するだけの映画なら、映画ファンの間でこれほど愛されてはいない。

海はもう目の前というところで、彼らは車の持ち主に捕まってしまう。海を見るという希望をくじかれ、死を目前としながらも殺されようとしている。しかし、この映画は、ここから本当の物語が始まる。


ドイツにはほとんど海がない。海や太陽はバカンス先にしかないもので、生活には存在しないものだ。日本人には考えられないが、海を見ず魚を食べずに死んでいく人も普通にいる。ドイツ人にとって、海は簡単に触れることのできない憧れの存在なのだ。
日本でもリメイクされたようだが、これは海に強い羨望をもつドイツ人にしか作ることのできなかった映画。これだけの悪事を繰り返してでも海に向かうのは、天国で仲間はずれになってしまうことが寂しいという理由だけではない。

しかし、この思いはドイツ人や海がない国の人達だけのものではないことは、映画の中でしっかりと証明してくれる。そして、そのシーンこそ、この映画の愛される理由だと思う。


天国で、海についてどんな話をされているのかを伝える台詞。この台詞を聞くだけでも観る価値がある。本当によい映画なので一度観てみてください。
(yuka)
2011/10/13(木) 15:47 映画(邦画/洋画) PERMALINK